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学生インタビュー:植村宏木さん(大学院美術研究科)

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ガラスでなければできないことを

大学院 美術研究科
植村宏木さん

美術の中でガラスという分野はもっとできることがあるんじゃないか、可能性がすごくあるんじゃないかと思っています。私は、北海道で生まれ、ガラスがやりたくて秋田へ、美術の勉強を通して興味の幅が広がり、瀬戸市新世紀工芸館を経てここにいます。秋田にいた頃から、ガラスでできることは何なんだろうかとを考えつつ探しながら場所を移してきました。ガラスは、焼き物とくらべると歴史が長いわけではありません。まだまだこれからだと思います。そういうことをじっくり考える時間が欲しかったんだと思います。
ガラスは、何となく感じることができるけども実際に見ることのできないもの、例えば、空気や気配、あるいは時間の感覚や記憶といったものを、表現するのに適した素材ではないかと思います。見えないものをあやふやな立ち位置で表現することに適していると考えています。溶けたガラスは、自在に形を変えることができ、水で形作れるものであればガラスでも作ることができるといわれています。扱いにくい素材のように思われますが、間接的ですが手で形を変えることもできますし、重力や遠心力を使って自然な曲線を作ることのできる素材です。技術を修得するために時間がかかりますが、最近になってようやく作りたい形をどうやって作っていけばいいのかだんだんわかって来ました。

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今回は、ホワイトキューブ、なにもない白い空間での展示になります。これまでは、アートプロジェクトなどで展開することが多く、その場合はその場所が抱えている、古い民家だったり神社やお寺だったりするんですが、気配や記憶を主題として作品を作って来ました。今回の展示はこれまでとは逆で、いろんなものを削ぎ落とし日常から切り離された空間です。あえていえば、外部から表現を持ち込むことになるわけです。今回はその空間にある、削ぎ落としても落としきれなかった部分、たぶん、空気だったり重力だったり、目に見えないエネルギーのようなものを表現することになると思います。
もう一つ、ガラスの位置付けについても考えています。ガラスによく似たものに樹脂がありますが、ガラスは割れたり欠けたりするという大きな違いを持っています。歴史的にも、中国や欧州では宝石よりも価値の高いものとして扱われたこともあります。そうした素材が持っている精神性のようなもの、ガラスならではの表現を追求したいと考えています。

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